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【スペイン巡礼1日目】初日から試練の1日。死ぬの?私、スペインの山の中で死んじゃうの?

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Saint-Jean-Pied-de-Port(サンジャン・ピエ・ド・ポー)〜Roncesvalles(ロンセスバージェス)26km

出発地点は、上記案内の右側。標高200mから一気に登り、ピレネー山脈を越えていく

昨夜は20時頃、韓国人おじさん達に誘われたワイン会の前にちょっと仮眠を取るだけ、と少し休憩するつもりでベッドに潜ったら本気で寝てしまった。眠気は寒さを凌駕するらしい。非常に簡素な二段ベッドのため、上下どちらかの人が少しでも寝返りをうつと、もう一方のベッドも連動して大揺れするという一蓮托生システム(?)に悩まされながらも、ほぼ爆睡してしまった。夜中1時頃に目が覚めたけど、またすぐに睡魔に襲われ、さらに5時間睡眠。(なんだかんだ言って、結局どこでも寝られるタイプ)

9時間睡眠で、一気に時差ボケ解消!目が覚めてから寒くて寒くて、ベッドの上に敷いた寝袋の中で丸まってうだうだしていたけど、他の人も起き始めた気配がした5:45頃に起床

ドミトリーの大部屋はまだ消灯されているので真っ暗。まだ寝ている巡礼者達の邪魔にならないように、ヘッドランプを装着し、とりあえずクルッと丸めた寝袋やバックパック、登山用ストックなど全荷物を両手に抱えて、忍び足でキッチンエリアへ移動した。

キッチンエリアに荷物を置いて、窓からの冷風が冷たく、薄暗いトイレで、パジャマ代わりのUNIQLOヒートテックシャツからmont-bellのジオライン長袖Tシャツに、ヒートテックレギンスからWacoalのスポーツタイツに着替えた。

私のスペイン巡礼に欠かすことができない相棒となる、このスポーツタイツ(イチローも愛用してるらしい。もちろんイチローのはオーダーメイドの高級品!)。スポーツタイツは「テーピング原理」により、履くだけで股関節からふくらはぎまでの筋肉と関節をサポートしてくれるわけだけど、とにかく履くのが大変!毎朝、タイトなジーンズにねじ込む〜とBoAを歌いたくなるような(ならない。というか、若いお友達はBoAわかるかな?笑)、タイツに贅肉を押し込む作業となる。ひと作業終えて、アルベルゲから提供される無料のビスケットにいちごジャム、牛乳で軽めの朝食をとった。

キッチンエリアには、韓国人おじさん達2人も既にパッキングを終えて朝食中。「なぜワイン飲みに来なかったのー!」と責められる(笑)私も薄暗がりの中、ヘッドランプの明かりで手元を照らし、寝袋を収納袋に入れたり、パッキングしたり。バックパックの一番下に寝袋を入れるので(バランス的に)、寝袋以外のすべての荷物を一旦取り出す必要がある。初日から忘れ物はしたくない。こんな暗い中でパッキングしたことがなく、意外と時間がかかってしまった。

旧市街を抜ける巡礼路は、結構急勾配な石畳の下り坂

6:45、忘れ物がないかしつこく確認して、極寒だったアルベルゲを出発。韓国人おじさん達が、一緒に行こう!と待っていてくれたけど、私の準備が想像以上に時間がかかりそうだったので先に行ってもらったため、完全に1人での出発となる。宿泊していたアルベルゲは旧市街の一番端(巡礼路の進行方向とは反対側)に近く、そこからの巡礼路は石畳の下り道。慣れない重さのバックパックを背負っているため、よろよろした。

スペイン巡礼に来る前にチラッと読んだ本やブログ、ウェブサイトに掲載されている写真では、巡礼路には巡礼者がたくさん歩いていた。「他の巡礼者についていけば、道に迷うことはないだろう!」と楽観的に想像していたわけだが、なんと。早朝の巡礼路には人っ子一人見当たらない。想定外。出発早々、不安になった。不安しかなかった。

旧市街を抜けて、振り返ってみた

旧市街を抜けたすぐ先で、巡礼者が3人ほど立ち止まり、地図を見ながら話し合っている。ラッキー♡これで道に迷う可能性は低くなった。彼らと一緒に歩いちゃおう!

スペイン巡礼のリピーターは少なくないが、立ち止まっていた彼らは全員カミーノを歩くのは初めてとのこと。初日の、出発直後から道を間違えたくないよね!とかなり慎重になっている。昨日、巡礼事務所でもらった資料や地図、各自が持参したカミーノガイドブック、maps.me(オフラインで使える地図&ナビアプリ。GPSで現在地もわかる!)などを総動員して、巡礼路を確認した。

4人で巡礼路を確認後、しばらく進んだところで、巡礼路の貝殻マークがついた標識があり、そのまま直進する道と、左に曲がって坂を上る道、二手に分かれている。そこへちょうど通りかかった地元民のおじいちゃんから「直進ではなく左に曲がって、上り坂に行くんだよ。ブエン・カミーノ(よき旅を)!」とジェスチャー付きで声をかけられた。メルシー!とみんなで御礼を言って(ここはまだフランス)、左に曲がり、坂道を進んでいく。出発してまだ30分。誰もが元気、ついにカミーノを歩ける!今、歩いている!という高揚感に包まれている。全員同じアルベルゲに宿泊していたけど今朝初めて会ったため、韓国人おじさん(カルロス)と韓国人ヤング男子、メキシコ人女性(カルメン)と自己紹介をしながら、笑いながら、登っていく。

15分ほど坂道を進んだ時点で、アルベルゲが見えてきた。あれ?これって「ナポレオンルート」にあるアルベルゲじゃない?誰かが言い出し、ガイドブックを確認したら、やはり私達が歩いているのは「ナポレオンルート」。

フランスのサンジャン・ピエ・ド・ポーから出発する場合は初日にピレネー山脈を越えるのだが、そのルートは2つ。この「ナポレオンルート」(標高が高い峰を越えていく、厳しい山越え)と「迂回ルート」(国道沿いにVelcarlosという村を経由する、ほ〜んの少しだけ楽な山越え)である。

巡礼事務所でもらった地図。右側のピンクで色づけられたのが「迂回ルート」

「スペイン巡礼(フランス人の道)の醍醐味といえば、初日のピレネー山脈越え!ピレネー山脈を越えるなら、ナポレオンルートを歩きたい!」

という巡礼者が多い(私もその1人だった)が、冬はもちろんのこと、ピレネー山脈に残雪があり、山越え中に亡くなる巡礼者も少なくない春〜初夏のシーズンも、こちらのナポレオンルートでの巡礼は禁止されている。(明確に罰則があるわけではなく、何かあっても個人の責任となるわけだが)

3月下旬のこの時期、残雪がある。昨日手続きに訪れた巡礼事務所でも「ナポレオンルート」の危険性をかなり強調され、「迂回ルート」を歩いてピレネー山脈を越えるよう強く言われていた。

ちなみに、ナポレオンルートを避ける迂回ルートは谷にある村を通るため、昔は巡礼者を狙う盗賊が隠れて待ち構えやすく、多くの犠牲(巡礼者の履物を盗もうとする盗賊に襲われ、殺された巡礼者もいた、とか)が出たらしい。あと、狼も多かったんだとか。

ということで、お散歩中のおじいちゃんによってナチュラルにナポレオンルートを教えられた私達は、30分ほどタイムロスしながらも迂回ルートに戻った。もちろん、このおじいちゃんに悪気はないけれど、あとで知ったのは、私達の後ろを歩いていた別の巡礼者グループ何組かも彼の助言で道を曲がり、ナポレオンルートで山越えしかけたとのこと(笑)

霧の中を歩くカルロスとカルメン

正しい巡礼路に戻り、国道沿いの歩道を歩く。霧がすごい。途中から国道を離れ、山道に入っていく。ついにピレネー山脈越えが始まった!!!

普段全くトレッキングをしたことがない私は、今日1日歩ききるためにどのくらいの水分が必要か見当がつかず、途中で水が買える売店があるかどうかもわからない。1lあれば足りるかな?と500mlペットボトルを2本、バックパックの左右の外ポケットに入れてきた。足りなくなるのも嫌だけど、多すぎて重くなるのも避けたい。これで荷物の重量は10kg。肝心のハイドレーションシステムはアダプターのサイズが合わないため、使い物にならず。水分補給の度に、腕をすごい角度で曲げてペットボトルを取り出すはめに。

山に入ったばかり、最初の上り坂で、苦しすぎて死にそうになった。短期間に情報収集をして、自分なりに厳選した必要最低限の洋服や登山グッズしか入れてきてないはずなのに、荷物がとにかく重い。この重すぎるバックパックをどこかに置いていきたい。置いていけないなら、何か捨てられるものはない?

上り坂きつい。やばい。ゼエゼエと息が切れる。足が前に出ない。足が動いてるはずなのに全然進まないのはなぜ?足が短いから?歩幅の問題?

出発直後に一緒に道に迷った韓国人ヤング男子は若者らしくかなり速いペースで歩いていき、既に後ろ姿も見えないくらい先に行ってしまった。少し前を歩く韓国人カルロスとメキシコ人カルメンは談笑しながら、大股で軽やかに坂を上っていく。

2人のペースについていけなくて悔しいが、いきなり体力がつくわけでもなく、現実を受け入れてのろのろと歩くことしかできない。つらくてつらくて、景色なんて見る余裕もなく、ただひたすら彼らの後ろ姿、足元を見て歩く。途中、細い道で避けるスペースもなく、ぬかるみを通らざるをえない場所があった。新品の登山靴が泥だらけになり、さらにテンションが下がる。もう帰りたい。のろまなカメの私を置いてけぼりにせず、彼らは何度も止まって待っていてくれたが、彼らのペースで歩いてほしいと思い、先に行ってもらうようお願いした。

8:50、出発から約2時間経過。水不足になるのが不安で、小さなスーパーに寄って、500mlのペットボトルを1本購入。バックパックの総重量がさらに増した…。スーパーでトイレを借りてスッキリ、暑かったのでフリースを脱ぐ。汗びっしょり。ウルトラライトダウンジャケットも汗で濡れて気持ち悪いが、これも脱いでしまうと寒いと思うので我慢して着たままでいる。フリースをバックパックに押し込んで、スーパーから外に出てみたら、めちゃくちゃ寒い!!!脱いだばかりの、汗で湿ったフリースを取り出してまた着る。私、何やってるんだろう。ずっと着ていればまだ気にならないものの、一度脱いだのを着るのはつらい。

巡礼路を示す道標を探す。昔の巡礼路では十字架が道標だったらしいが、現代の巡礼路では、鮮やかな青地に帆立貝をデザインした標識、歩道や石ころに無造作に描かれた黄色矢印が正しい方向を示してくれる。えっと…道標が全然見つからないんですけど?笑

現代の道標はこんな感じ

都会だと、こんなのもある

さっきスーパーの手前には道標があった。ここまでは間違いなく巡礼路。この先、右か左か。どっちへ行けばいい?

ここから先の進行方向右手には、ガソリンスタンド。ガソリンスタンドの後ろになんとなく細い道があるように見える。左手には、小さな橋を渡って国道がある。国道のほうが巡礼路っぽいかな?よし、国道に決定。いや、でもここで道間違えたらこわいから、誰か巡礼者が来るのを待つべきだな。誰か来て~

と思っていたら、その国道を1人の巡礼者が登ってきた。え?そっちから来たの?どんなルート通ってきたの?!と驚いたものの、彼も巡礼者を探していたのだろう、私を見てひと安心したようで近づいてきてから早口のオーストラリア英語でのマシンガントークが止まらない。「サンジャンからマインロードをずっと歩いてきたんだけど、誰にも会わなくて!不思議に思いながら歩いてたんだよ!よかったよかった、巡礼者に会えて!Blah-blah-blah…で、ここからどっちに行くかわかる?このままマインロードを進めばいいのかな?」

おっと、彼に道は聞けなさそう。だって、彼が歩いてきた道は完全に巡礼路じゃないもの(笑)

ガソリンスタンド横の道へ行ってみることにした

他の巡礼者が来るまで待ったほうがよさそうだね、と立ち止まっておしゃべりしていたところに、昨日アルベルゲで見かけたスペイン人男子が1人で歩いてきた。あなたスペイン語できるんだから、ちょっとそのへんで聞いてみてよ、と思ったけどここはまだフランスだった(笑)

「自信はないんだけど、なんとなく右手のガソリンスタンド側の気がする」というヤングな彼の意見で右手に進んだところ、アスファルトで舗装された道に、消えかかったような、ものすっごくわかりにくい黄色矢印があった。あえて迷わせようとしてる?と思えるほどのわかりにくさ。こちらが巡礼路。ひと安心。そこからの上り坂を、知り合ったばかりの3人で励ましあって登り続けた。

巡礼事務所でもらった紙と同じ光景。右の道は行ってはいけない、と巡礼事務所で言われたけれど…実は近道だったのかも

アップダウンを繰り返し、小さな集落を抜けていく。

迂回ルートといえども、決して楽な道ではない

オーストラリアの数学教師アンドリュー(60歳)が、早足で歩きながらガンガン話しかけてくる。自然に、先生と生徒のような会話になる。質問の仕方が上手なの。まるで私達、スペイン男子ブリュー(21歳、学生)と、ちょっと年増な生徒の遠足みたい(違)。アンドリューはカミーノを歩くためにトレーニングしてきたらしく、重そうなバックパックを背負っているのに、21歳にも負けないスピードで歩いている。元気すぎる。30代の生徒はもうバテバテです、先生。

3人で歩き始めてから結構時間が経ったはずなのに、前にも後ろにも私達以外、巡礼者の姿が全く見えない。今はまだ巡礼のハイシーズンではないため、巡礼者の数が少ないそうだが、そうはいっても誰もいなさすぎて驚く。歩いている地元民もいない。人けがなさすぎる。犬しかいない。

最初の村、Velcarlos(バルカルロス)まであと少しだよ!という標識が出ていて、その矢印に従って1本道を来たはずなのに、それらしき村がない。目の前には、ものすごい急勾配の上り坂。この上り坂の先がVelcarlosなら、この坂を登りたい。でも、その先が行き止まりだったら?と考えると、この疲れ切った状態で無駄にエネルギーを使いたくない、という邪な気持ちが出てきてしまう。

若くて疲れ知らずの生徒ブリューが「ナッツ食べる?チョコレートいる?食べてていいよ。ボクが見てきてあげるよ!」と坂をサササーッと軽快に登りきり、「村があった!バルがある!」と坂の上から合図を送ってくれた。ああ、ありがたい。先生と、怠惰なほうの生徒はハアハア言いながら坂を登って(ハアハア言っていたのは私だけ)、雑貨店を併設したバルにたどり着いた。

この何気ないバゲットの美味しさよ

ゴールまでにあと何本コーラを飲むことになるか、今後の記事でカウントしてください(笑)

目の前の雑貨店兼バルで、コーラとバゲットを購入。店先で立ったまま少し休憩。ここはまだ、フランス(のはず)。もう少し歩けばスペイン領ナバラ州に入るはずだ。ナポレオンルートを歩いた場合、一応フランス−スペイン国境がわかるようになっているそうだが、迂回ルートではいつの間にか国境越えしちゃっているらしい。

こんな道を歩いたり

12:25、出発から5時間半ほど経過。緩やかに上り続ける車道沿いの道を、休憩もせずにずっと上っている。男性2人の歩くペースが早すぎて、彼らのペースに合わせて歩いて死ぬ or 自分のペースで歩いて生きる、の二択を迫られたため、生きることを選ぶ。ひとけがない山道で1人になるのは不安だが、迷惑かけたくないので彼らには先に行ってもらうことにした。

彼らを見送った直後、車道横にある、ガードレールの切れ間のスペースに崩れるように座り込んだ。すぐ後ろから韓国人男女3人組グループが登ってきて、バックパックも降ろさずに座り込み、顔を真っ赤にして息切れしている私を心配して声をかけてくれた。彼らはそのまま歩き続け、あっという間に姿が見えなくなり、私はまたひとりぼっち。ここに座っていたら立ち上がれないまま夜になりそうだったので、なんとか気力を振り絞り、立ち上がって歩き出した。

足を前に出しているつもりなのに、全然進まない。両手に持った登山用ストックでリズムをつけて、強引に体を前に前に押し出していく。いくつかカーブを曲がったところで、さっきの韓国人グループが休憩していた。声をかけて通り過ぎ、めちゃくちゃ遅いスピードで歩き続けた。

写真だと平坦に見えるでしょ?実際は、終わりなき上り坂なの

思い出すだけで、涙が出そうになる。試練の1日だった。

前半の道のりもつらかった。それは主に、肉体のつらさ。まともなトレーニングなしで、のこのことピレネー山脈にやってきてしまったことに対する当然の仕打ち。ここから始まる後半の道のりは、肉体はもちろん、精神的につらかった。

永遠に続くような、コンクリートの上り坂を登り続けているが、後ろにも前にも巡礼者がいない。さっき私が追い抜いてきた若い韓国人グループが全然来ない。彼らの歩くペースはすごく速かったからすぐ追いつかれると思っていたのに、何度後ろを振り返っても誰も来ない。来ない。来ない。

え?私、道間違えた!?!?

いや、いくらボーッと歩いていたとしても車道は1本しかなかったし、分岐点もなかったはず…たぶん。急に自信がなくなってきた。こんなに時間が経ったのに誰にも追いつかれないのは、ただひとつ。私が道を間違えている!

やばい。やばい。やばい。風が強くなってきた。汗で濡れたウエアが冷えて寒い。誰も来ない。ときどき車が猛スピードで走り抜けていくだけ。手を振ったって停まってくれる車なんてない。何よりも無力だったのは、アルベルゲやバル(軽食レストラン)でFree Wi-FiがあるからSIMカードは要らないよ、という情報を信じてスペイン版SIMカードを買ってこなかったこと!!!インターネットに繋がらない。オフラインで使える地図アプリも事前に周辺地図をダウンロードしてこなければ使えないなんて知らなかった(おバカ)。何もできない。

ここはどこ?このまま登り続ければ、本日の目的地の村に到着できるの?登り続けて、違う山に登っちゃって雪山に突入っして遭難なんて可能性もある?それとも、さっきの村まで引き返したほうがいい?その途中で他の巡礼者に会えるかも。そもそも、私の出発した時間って早いのか遅いのか。私の後ろに巡礼者がどのくらいいるんだろう。何もわからない。

進むにせよ、戻るにせよ、歩かないと現状打破できない。

でも足が動かない。お腹も空いた。今朝6時すぎにアルベルゲでビスケット3枚食べて、牛乳を飲んだ。途中の村で、バゲットをかじってコーラを少し飲んだ。今、食糧としてバゲットが残っているけど、水がほとんど残ってないから口の中パサパサになるのが怖くて食べれないジレンマ。あんなに持っていた水が底をつきかけていた。水、飲み過ぎ(笑)

振り返っても誰も来ない。スペインの山の中で、完全にひとりぼっち。

他の巡礼者も語っているが、前へ前へ、とひたすら歩くスペイン巡礼では、道を間違えたかも?と思った時でも引き返す決断をするのはかなり難しい。戻ることが明らかに正解の場合でも、それまで歩いてきた努力が無駄になるような気がして、抵抗を感じてしまう。どうしても前に進みたくなるのだ。

私も初日にして、すっかり巡礼者だ。戻るという決断はできなかった。とにかく進もう。そう思って上り始めるものの、つらくてつらくて、すぐ立ち止まってしまう。あの木まで歩いたら休憩しよう!と自分に言い聞かせて歩き出すものの、そうやって自分で決めたささやかな目標さえ守れず(あの木というのはたった20m先、だったりする笑)、10mほど進んで立ち止まってしまう。そんなことを繰り返しているから、全然進まないし、景色が変わらない。

ときどき猛スピードで私の横を走り去っていく車を目で追ってみると、はるか遠く、木々の間、かなり上のほうを走っていくのが見える。絶望した。曲がりくねりながら、あそこまで車道が続いているのか。

14時頃、ついに限界を感じ、車道横の草むらに座り込む。もうだめだ。終わった。吹く風はさらに冷たくなり、日が陰ってきた。

どのくらいの間、そこに呆然と座り込んでいたかわからない。

ふと、昨日巡礼事務所でもらった資料の1枚を読み直そうと思いついた。インクのかすれた印刷物の中から【N-135/km52】というキーワードが目に飛び込んできた。今、座り込んでいる私のすぐ横に【km53】という標識がある!!!

もう一度、真面目に読み直すと、km52の標識が見えたらもう少し進みましょう。緑色の屋根の建物があり、その少し先の水汲み場の横の細い上り坂を登れば頂上ですよ!的なことが書いてある。今、53。ここまで来る手前に、車道から分かれた道も、緑色の屋根の建物もなかったはずだから、あと少し登ればkm52があるはず!!!

と冷静になればなんてことないことだし(出発する前にちゃんと読んでおきなよ、って感じだけど。一応読んでたはずなんだけど)、あの時の朦朧とした精神状態では「登ったら52?それとも54?どっち?わかんないけど、とりあえず登る!上に行って54だったら戻ればいい!」となっていたから、振り返ると自分がこわい(笑)

助かったー!生きて帰れる!と叫びそうになったkm52の標識。一般的には、なんの変哲もない標識(笑)

数十分後、車道横に【km52】を発見!感動!道、間違えてなかった!

ここからすぐに緑色の屋根の建物が見えると思っていたのに、その後も続く登り坂。さっきまでよりは少しだけ明るい気持ちで登り続けていたら、緑色の屋根が見えてきた!

ちょうどそのタイミングで、建物の横にひょっこり出てきたドイツ人男子(ヨナス)とバッタリ!あーよかった!巡礼者がいた!このときの感動をどう表現したらいいのだろう。ものすごい安堵。ピレネー山脈での遭難を免れた!(大げさ)嬉しすぎて初対面の男子にハグしかけたが、ギリギリで我に返った。危ない危ない。

彼が登ってきたケモノ道は、この時期は危険だからあまり通らないように、と巡礼事務所のスタッフから地図に×をつけられた道。でもこの道のほうがきつくても時間短縮になるから、車道じゃなくてケモノ道を選んだ巡礼者が多かったみたい。どうりで。事務所で言われた通り、曲がりくねった車道横を歩いてきた私を追い越していく巡礼者がいなかったわけだ。

彼のGoogle Mapsによると、本日の目的地まではここからもまだかなり距離があるとのこと。ほぼゴールしてたつもりになっていた私としては、まだ登るんかー!と心の中で涙。そこに、私が追い抜いた韓国人グループにいた女の子ミリーも私と同じ車道を登ってきて合流。彼女、何分休憩してたんだろ(笑)

道を間違えていないことがわかった。残る問題は、飲み水がもうほとんどないこと。あとひと口分だけ。明日はもっと買わないと。水汲み場があったけど「飲料用ではありません。飲んでもいいけど、飲むのは自己責任」と看板あるから、たぶん私は大丈夫な気もするけど、飲むのはやめた。水飲みたい、でも、ない。水飲みたい、でも、ない。の繰り返し。

車道を離れ、草が泥でぐちゃぐちゃになった細い坂道を登り続ける。これが苦行。他に表現しようがない。まさに苦行。先が見えない。ただただ登り坂が続く。登っても登っても景色が変わらなくてつらい。ドイツ人男子ヨナスはリンゴを齧りながらスタスタと登っていってしまった。

もう道はわかった(つもり)なので、みんなから置いていかれてもいい!と思って自分のペースで歩く。本当につらい。足が前に出ない。ボキャ貧で申し訳ないが、それ以外の表現が見当たらない。水の分は減ったのにまだまだ荷物が重くて、後ろに引っ張られるような感じがする。何度も泣きそうになる。

どうしてこんなところに来ちゃったんだろう。

今日だけで何回自分に問いかけたか、わからない。後ろから登ってくる巡礼者にどんどん追い抜かれる。

どのくらい経過しただろうか。少し先を歩いていたミリーが振り返って何か叫んでる。日差しを遮っていた木々がなくなり、広々とした空が見える!何か石像が見えてきた!あそこが峠の頂上のようだ。あと少しなのに、足が動かない!もう!

頂上に続く階段を1段ずつ、よろよろと登っていたら、後ろから追いついてきたリトアニア人男子が開口一番「水くれない?俺のファンタなくなっちゃってさ!」彼のバックパックには、2リットルの空のファンタオレンジのペットボトルがぶら下がっていた。
ごめん、私も水ないんだ、と言うと、あっそ!と追い抜かしていった。なんなのー。

頂上の石碑!後ろがピレネー山脈の残雪

個人の自由だけど、登山するのにファンタオレンジ?口の中、ネバネバになるんじゃないの?とか考えていたらIbaneta峠に到着していた。すぐ隣の山には、多くの残雪が…うん、「ナポレオンルート」で山越えしなくて正解(笑)

本日最後の難関、Ibaneta峠から1.5kmの下り坂

15:10頃、出発から8時間半経過。本日の目的地の村Roncesvalles(ロンセスバージェス)までは、この峠から国道沿いにアスファルトで舗装された道を1.5㎞下る。下り道でしょ?楽勝!なんて思ってた。実際は、上り坂に負けず劣らず、下り坂も地味にきついの。向かい風が強くて、下り坂なのに進まない。1.5kmってこんなに長かった?もうやだよー疲れたよー寒いよーとか1人でブツブツ呟きながら、防寒対策でゴアテックスジャケットのフードを被って紐をギュッと結んだ。見た目ダサそうだけど恥ずかしくない、誰も見てないし、みんな他人のこと気にする余裕はないんだから(笑)自分の足元だけを見ながら、トボトボと歩いた。

永遠に思える時間が過ぎた頃、Roncesvallesの村を示す看板が見えてきた。村っぽく見えるけど、ここは本当にアルベルゲがある場所なのかな?車道から建物があるエリアに行くには、急な芝生を降りる必要がある。ここで芝生を下ってみて実は違ってましたー!となったら、またこの芝生を登って車道に戻らなきゃいけない。それは避けたい。少し前を歩いていた男性巡礼者も同じようなことを考えていたみたい。周囲の様子を伺い、そろそろと降りていく。私もついて行く。足ガクガク。もう歩けない。そこへ目の前のツーリストインフォメーションの建物から陽気なおじさんが出てきて呼び込んでくれて、アルベルゲの説明をして村の地図をくれた。よかった、もう少しで荷物をおろせる!座れる!足を引きづりながら、アルベルゲへ向かった。

アルベルゲの中庭には残雪が残っていた

アルベルゲ入口

修道院をリノベーションしたというアルベルゲ。外観は古いが、シンプルでモダンな内装は想像よりもはるかに綺麗だ。私の中のアルベルゲのイメージが覆された。(そんなにアルベルゲに対して明確なイメージを持っていたわけではなかったけど)

登山靴用ルームの衝撃の悪臭

16時30分、出発から10時間弱が経過。フレンドリーでプロフェッショナルなスタッフ達に暖かく迎えられ、人生2回めのアルベルゲへ入った。ああ、暖かいいいい。今度は嬉しくて泣きそう。すべての力が抜けてしまい立っていられなくなり、ヘロヘロとベンチに座り込む。あまりの疲れで、すぐには立ち上がれない。スタッフから促されるまま、とりあえずバックパックを降ろし、登山靴を脱いだ。

チェックインする前に、登山靴を専用の靴部屋へ置きに行く。ここの臭いがやばかった!臭い!臭すぎる!足のニオイのすごさよ!1日履いただけの登山靴が数十足集まっただけでこの臭いということは、この先どうなるのか。

2階ドミトリーエリア

1つのスペースに4ベッド(写真奥の壁側に個人用ロッカー完備)

1階のレセプションで、指定の紙に名前やパスポート番号、巡礼目的等を記入し、宿泊代金を支払って、クレデンシャル(巡礼手帳)にスタンプを押してもらう。本日のアルベルゲは10€(約1,200円)。この村にはレストランが数軒しかないため、希望者はここで事前にディナーチケット(10€)を購入し、皆が同じ時間からディナーを食べることになっているようだ。

一度おろしたバックパックをよっこらしょと持ちあげ、足を引きづりながら2階に行くと、廊下のソファやベッドスペースには、今日の戦友達がいっぱい。「Yukaー!!!無事に着いたんだね!よかったよかった!あまりにもつらそうだったから、みんなで心配してたよー!」とハグの嵐。今日会ったばかりなのに、こんなにも熱い歓迎。これこそ、スペイン巡礼者同士の連帯感。感動。汗臭くて申し訳ない。

このアルベルゲも到着順にベッドが指定されていた。私のベッドはNo.116…今夜もベッド上段だった。体が痛くて、はしごで自分のベッドに登れない…。

同じブロックの向かいのベッド下段には、私を励まし続けてくれたオーストラリア人アンドリュー。その上のベッドには、私をものすごく安堵させてくれたドイツ人ヨナス。そして、私の下のベッドには、私をイライラさせてくれたファンタオレンジ男!

番号を押すと、該当する商品が落下するシステムの自販機。何食わぬ顔して、押した番号の隣の番号の商品が落下してきた。けど、もうなんでもいい、食べられれば…

ひとまず自分のベッドに登るのを諦め、荷物を取り出してロッカーに収納し、シャワーを浴びる。シャワー室壁のボタンを押している間だけお湯が出るタイプのシャワーだったから、背中でグリグリとボタンを押しながらシャンプーする必要があったが、温かいお湯がジャブジャブ。冷えた体を優しく包み込んでくれた。ああ、幸せ。

移動日が続いていたため、洗濯のタイミングを逃し、洗濯済みの服がほとんどない。シャワーを終えて着替えた時点でノーブラだったのは、ここだけの秘密♡ こんなに疲れているのに手洗いする気力もないし、この時間から干しても絶対に乾かないのは明白だったので、有料のランドリーサービスにお願いすることにする。地下に持って行ってスタッフにお願いしたら「量が多いから5€!乾燥も含めて約2時間で仕上がるよ!」。自販機でジュースとお菓子を買っていたらブリューがやってきたので、おしゃべりしながらお菓子を食べた。その後、疲労ピークのため、2階に戻って昼寝することにした。

ねえちょっと、聞いて。昨日のアルベルゲとは打って変わって、ちょうどよく設定された室内温度。全然寒くない!アルベルゲって寒いわけじゃないんだ!笑

気合を入れて二段ベッドのはしごを登りベッドに一度横になったら、体が熱く、溶け出すように重く感じ、動けなくなった。あっという間に夢の中。目覚めると、ディナーの前に取りに行こうと思っていた洗濯物は、なんと私のベッドまで届けられていた!なんという優しさ!しかも、想像以上のふんわり仕上げ。綺麗に畳んである。すごい!

洗剤のいい香りのするブラキャミを着て、ふわふわあったかのフリース、若干防寒性が低下したような気がするウルトラライトダウンジャケットを重ね着し、ディナーチケットを持ってアルベルゲ外のレストランへ向かう。この村は標高が高いため(標高900m)、3月下旬でも朝晩はかなり冷え込む。素足にビーサンの足元が寒くて、つい小走りになる。チケットで指定されたレストラン(アルベルゲ近くに3軒ほどレストランがあり、こちらから指定はできなかった)に行き、19時からのディナーを楽しみに待った。

巡礼路沿いのバルやレストランでは、巡礼者向けのMenu de Peregrinosメヌー・デル・ペレグリーノス(巡礼者メニュー)が特別に提供されている。一般的なメニューよりもリーズナブルな価格設定である。お店によって価格やメニュー内容は異なるが、ドリンク付きで9〜12€(1,100〜1,500円)、メニュー構成は以下のようになっている。

巡礼者メニューの内容

①前菜(ミックスサラダやスープ、スパゲティなど)

②主菜(チキンやポーク、ビーフ、白身魚など)

③デザート(ヨーグルト、またはアイスクリーム)

上記から、それぞれ1種類ずつ選択。これに、食べ放題のバゲットがついてくる。

飲み物は、赤ワイン、または水。ビールが選べる店もある。ワインの場合は、1テーブルに1ボトル(4人で1ボトルをシェアする)か、ピッチャーで提供される。

ワインを飲めない(飲まない)人は自動的に水になるので、割り勘負けする気分になるらしい(笑)

とあるバルの巡礼者メニュー。ここのバルの巡礼者メニューは、かなりレベルが高かった。ひどいバルだと、もろに冷凍食品…

初めての巡礼者メニューをいただきます!

前菜:トマトソースのパスタ

主菜:チキンのグレービーソースがけ&フレンチフライ

デザート:チョコとバニラのアイスクリーム

ナバラ州のワイン

同じテーブルを囲んだのは、韓国人男子2人(23歳、25歳)と、ウェールズ(イングランドじゃないのよ!)の女の子(24歳)。3人から「Yukaは25歳くらいに見える!」と言われて喜ぶ1983年生まれ。喜ぶ時点で若くない、というやつ(笑)

私の左に座っていた韓国人男子ヨンのポケットからチューブ型の何かが落ち、ハンドクリームかな?と思って拾ってみたら、コチュジャンチューブだった…!

食事を終えた20時。アルベルゲ横の教会で巡礼者用ミサが始まった。疲れて眠くて足が痛いところに、ミサ中の起立着席の繰り返しが地味にこたえる。ミサの最後、「巡礼者は前に」という司祭のお言葉で、ビーサンを履いた巡礼者達が祭壇の目の前に並び、巡礼旅の安全を祈ってもらう。ミサ参加者の出身国も読み上げられ、最後のほうに「ハポン(日本)」とハッキリ聞こえた時には、明日からも続く巡礼に対して期待と不安の気持ちがさらに高まった。

ミサが終わってアルベルゲに戻り、荷物の整理を終えて、ベッド上段にたどりついた。長い長い1日が終わった。なんとか死なずに済んだ(笑)

明日のことは、また明日考えるとしよう。筋肉痛で体バッキバキになっているだろうけど、それも明日なんとかすることにしよう。21:45頃、横になった瞬間、深い眠りについた。

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